ポール・スミスという人間の魅力を語るうえで、外せない近年の出来事といえば、2011年3月11日に発生した東日本大震災時の彼の温かい対応です。
ポール・スミスは、日本をこよなく愛する「親日家」として知られていて、1982年から毎年4、5回程は、日本に訪れています。ポール・スミスの店舗は、日本では200店舗ほど展開しており、約1000人のスタッフが働いています。
そうした企業として日本との関わりが深いということもありますが、それ以上にポール・スミス自身、日本文化に造詣が深く、日本文化を愛し、そして何より日本人のことをとても愛してくれています。
親日家のポール・スミスは、東日本大震災による壊滅的な被害をニュースで知り、大変心を痛めました。ポール・スミスの店舗は、東日本大震災で被害を受けた仙台にもあり、そのほかにも取扱店舗は東北にもたくさんあります。
ポール・スミスは、この東日本大震災のニュースを受けてまもなく、日本にむけてメッセージを発信してくれました。
内容は、虹を描き「この困難に強く前向きに立ち向かってください。毎日が新しいはじまりです。愛を込めて」と綴られた温かいメッセージでした。
そしてさらに、ポール・スミスは大胆な行動に出ます。
日本ではまだ余震も続いている状況で、日本に滞在していた外国人は日本から逃げるように帰国し、外国人は日本への渡航を控えているという状況でした。
そんな中、まだ震災発生後1ヶ月の4月上旬に、社内の猛反対を押し切る形でポール・スミスはなんとたった1人で来日するのです。
そして、希望の架け橋をイメージした虹の絵とメッセージをプリントしたハンカチ1000枚を持参し、ポール・スミスの店舗スタッフ1人1人に手渡しで配り励ましの声を掛けました。
1週間の日本滞在中は、ポール・スミスは、精力的に動き回り、スタッフを励まし、東京ビッグサイトで展示会を開催し、そして表参道、丸の内、渋谷の三つの路面店では顧客と触れ合い日本人をそして日本を勇気づけてくれました。
ポール・スミス自身、日本での1週間の滞在中に震度4の余震を体験したといいます。
それでもポール・スミスは、「問題ない」と語っていました。
そしてポール・スミスの日本へのエールはまだ続きます。
単身で日本に駆けつけてくれたその半年後の2011年10月、今度は自身の2012年春夏メンズ&ウィメンズの合同ファッションショーを日本で初めて開催してくれたのです。
掲げたテーマは、「I LOVE JAPAN」。BGMにビートルズの「All You Need Is Love」を使用するなどして、幸福のイメージをショーに盛り込み、閉塞感漂う当時の日本を大いに元気づけてくれました。
実は、ポール・スミスは、1995年の阪神大震災の時も今回と同じように温かい対応をしてくれていました。時を経ても変わらない日本への熱い想い、そして変わらない熱い対応、素敵ですね。
災害時の有名人・著名人のボランティアや現地入りには、様々な意見があります。
「売名行為ではないか!」「人気取り・好感度アップのためのパフォーマンスではないか!」との意見も聞こえてくる近年の状況です。
しかし、ポール・スミスは、愛する日本のために、自身の想いをそして復興の願いを届けるべく、危険を恐れず、世間からやそして社内からの評価をかえりみずに、自身の信念に基づき単身来日し、現地スタッフ・そして日本を励まし、ファッションショーを開催するという行動に移してくれたのです。
このように、相手を想う気持ちや信念に基づきすぐに行動に移せるバイタリティこそが、ポール・スミスという人間の魅力なのです。
ポール・スミスという一人の人間の「思いやりの気持ち」や「信念に基づく行動力」は、ファッションブランドである「ポール・スミス」にうまく反映され、現在までの目覚ましい発展につながっているのでしょう。